僕にとってのクライミング

2015-03-08

今回のスペインツアーは、色んな思いが詰まっている。

特に今日のクライミングから感じた事は僕にとって余りにも大きかったので、以下に記すのははツアーレポートというより日記のようなものです。

ツアー後編に際して、僕は四つの目標を立てた。

1.デボラ・オンブレス7c+(5.13a)の完登
2.前半のツアーで触る事のできなかったルートへのトライ
3.ブルーシャスでのクライミング
4.8a(5.13b)の完登

最初の目標は後半のツアーのきっかけともなったデボラを登りたくて日本でのトレーニングに励んだ結果、クライミング4日目に成し遂げた。

そのおかげで二つめの目標も達成している。
デボラ完登で余裕ができた為、前半で聞いていたお勧め課題を何本もトライする事ができたのである。

三つめの目標、ツアー中盤の13日目(クライミング9日目)にブルーシャスでのクライミングを行う事ができてクリアした。

しかし、ブルーシャスで目論んでいた8a(5.13b)へのトライはトップアウトさへままならず、未だに達成されていない。

 ここまで書くと後半のツアーが順調にすすんでいるように感じられる方もいるだろう。
しかし、僕にとって順調とは程遠い中盤を過ごしていた。

それは、後編ツアー(2月〜3月)のクライミング初日、オリアナにあるTutti Frutti7c+(5.13a)との出会いが引き金となったのかもしれない。
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話に聞くところによると、Tutti Fruttiは僕の尊敬する女性クライマーがオンサイトを成し遂げている。
僕もオンサイトを狙ったが核心で敢え無くフォール(墜落)。
二便目は惨憺たるものだった。

その後、デボラを完登して晴れ晴れとした気持ちで2回目のオリアナに出向いた。
その日は仲間3人とTutti Fruttiをトライ!同じルートを一緒にトライできるなんてめっちゃ嬉しかった。
2巡目、仲間がTutti Fruttiをレッドポイントした。
僕も2巡目、実質3回目のトライ(その日一便目は探りに上がったので通算4便目)で、まさかの核心を抜ける事ができた。

よし、登れる!

仲間と同じ日に同じルートをダブルレッドポイントをできるなんてめっちゃ幸せだと思っていた。
核心を超えてから凍える手を温めながら高度を稼ぐ。
しかし、最終ヌンチャクにクリップしたあたりで手のパンプが一気に進む。
手のシビレだけでなく全身が麻痺し始めていた。
レストする度に、体が麻痺してゆく。

「落ちるかもしれないけれど突っ込みます!」
って叫んでいた。

痺れた体は動いてくれた。
終了点を掴んでいた。
右手でロープを持ちたかったが、無理だと判断して右手もホールドを掴んだ。
僕は両手を終了点に到達させていた。

ただ、その時なんの力も残っていなかった。
ロープを触る事すらなく瞬時にフォール。

あ”--------------------っっっ!!!

登れた・・・のか?
確かに終了点に到達したが完登(レッドポイント)していない・・・

僕は核心を超えた時、登れると思い喜んでいた。
デボラを登った事で、自分が調子が上がっていると喜んでいた。
そう、僕は調子に乗っていた。
しかしそれは簡単に手から滑り落ちるほどのちっぽけな自信だった。

30mのルートの終了点からロワーダウンしている時に、1本1本の指に心臓があるかのように血の流れを感じた。
長いロワーダウン、最初は悔しさ、口惜しさ、無念さで自分に対してあきれ顔だった。

また登らなければならない・・・
いや、また登る事が出来る・・・
登れていたら当面触らないだろうが、またチャレンジする機会をもらった。
これからのよりハードな登りへの持久力トレーニングになるはず。

ロワーダウンが終わるころ僕は笑顔に変わり地上に降りた。
That’s climbing!

次回、必ず完登する!と信じていた。

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その後の一週間、Tutti Fruttiはさて置き、他の岩場で色んな課題をトライしていったのだが、7a+(5.12a)以上の課題が登れない状態にはまっていった。色んな課題を触り疲れも溜まっているのだろうと思っていたが、極めつけはある日の最終便に現れた。
それは7a+(5.12a)のルートだったのだが、疲れ果て、手も足も痛くて全てのクリップでテンション。ガバを持ってもテンション。何をやってもテンション。

それから数日、僕の手足は熱く、痺れが治らなかった。
完全にオーバーユース、使いすぎ。

それでも、登り続けたい思いは僕をジョギングに駆り出し、体幹トレーニングに没頭させ、12月に59kgあった体重は54.9kgまで落とす事ができた。

力の弱い僕は今回のツアーで極限まで体重を落とそうとしていた。スノーボードに没頭していた8年前の最低体重は53kg、これが目標だった。
登りの日は、岩場に煙草も持って行かなかった。
ヨネちゃんの作ってくれる晩御飯も、12月とは打って変わって高タンパク、低カロリーに徹していた。それでも美味しいのだからヨネ飯恐るべし。
そんなヨネ飯すら食べるのを控えた。
普段必要と感じていないBCAAも登った直後は投入しまくり、足りると思っていたBCAAをツアー半ばにして1瓶空けてしまった。
(幸い、3月から参加した仲間に依頼して補充できた。)

僕はエンジョイクライマーである。
ストイックなクライミングをしていない。登りたい時に登り、疲れたら休む。
もちろん登りたいルートに出会うと夢中になる。頻繁に通いこむ事も多々ある。
それでも自分はストイックなクライミングをした思いが無い。

しかし、登りたいという思いはあらゆる手段を講じたくなるのだと初めて感じた。

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2日間レストを取り、腫れ上がった手は治まらなかったが8日振りにTutti Fruttiを探りに上がった。
体は軽い。動きも良い。テンションを入れながらのムーブの確認でキレも感じ、間違いなく登れると思った。

トライ通算4便目(実質6便目)、つなげて登ると核心入口でフォール。

手足の痛みは止まない。
その日はたった1トライでクライミングを止め、また2日間レスト。

7日間で2日しか登らず。
それでも尚、手足の痛みは癒えない。
僕には休養が必要だ。

そしてレスト明け、コヴァグランで目標のハード課題へのトライ。
2便出し、ボコボコに敗退。
他の課題も敗退、敗退。
手足の痛みが集中力を低下させていた。

翌日も休むつもりだった。
残り日数を考えると、ハード課題や目標の8aはほど遠いと感じていた。
ある意味落ち込んで、スネていた。

レストのつもりで深夜ヨネちゃんの過去ブログの読み返し、楽しくて眠れず、朝食後爆睡していた。
しかし、突然タルタレウの岩場に行くで!って起こされた!
運転手して!って。

いやいや、俺はレストが必要やねん!運転どころか20時間ぐらい寝る!
ん?タルタレウ?
行った事ない岩場。
行く行く!
・・・・・・
ん、登る登る!!!

もう食べたいだけ食べて、岩場でも吸いたいだけ煙草も吸った。

易しい課題を6本オンサイトした。
手足は痛かった。でも豆も削り痛みは減りだしたのを感じた。
とても、とても楽しかった!

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翌日、3日連続となってしまうがオリアナに赴いた。
休みが必要なはずなのに。
でも、Tutti Fruttiを2便出した。
全然登れなかった。

その翌日、レストを利用して一人で3時間半ハイキングをしながら考えた。

僕は、Tutti Fruttiに対して絶対登りたいって思っていなかったのかもしれない。
安易に登っていた。
一度全てのムーブを通して登った時に、モチベーションを失っていたのかもしれない。
間違いなく、もっと上のグレードを登りたがっていた。

現実はもっと真剣にトライしないとTuttiは登れない。
上のグレードより、やるべき課題は山ほどある。

ああ、ああ、Tutti Fruttiを絶対に登りたい!

山の上の教会で、クライミングってやつは・・・やめられへんなあ!
ってつぶやいてた。

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そして、今日、朝3時から目が覚めた。
結局寝床でパソコンいじって6時には起きだした。
完全な寝不足。
なのに、Tutti Fruttiを登る自信に満ち溢れていた。

天気は快晴!
日差しがきつく、みんなは暑い暑いと言っていた。
でも、僕にはBest condition!大好きなコンディションだ!

全てが整っていた。
ハイキングレストがとても良く効いたのかウォーミングアップがとても軽かった。
手足の痛みは無かった。
毎回巻いていた中指のテーピングも忘れるほどに、何も痛みを感じなかった。

昼の1時前、強烈な日差しを浴びながら僕はTutti Fruttiの核心を超えた。

帰ってきたな。
気持ちいいなあ。

最後の一手、タッチして落ちた。
15日前、4便目で到達した時より力はあったのに・・・

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心・技・体

全てが揃った時に、限界を超えることができる。

僕は体が弱い。
でも、心はもっと弱い。
最後の一手、心が足りていなかった。

自分のふがいなさに、登れない事で初めて涙した。
3秒だけね。
次の瞬間、笑えた。

ぜっ〜た〜い、登る!!!!!!

夕方、課題は日陰になっていた。
僕は15日前、寒さで手が凍えたのを思い出し不本意ながら長袖を着た。
あれだけ重さを気にしていた僕が・・・

3時間半のインターバルは長すぎか?短すぎか?

仲間からアドバイスも受けた。
声援も嬉しかった。

日陰なのに登っていると長袖は暑かった。でも集中力が高まれば暑さはどうでもよくなった。

最後、トラバースを終え最終セクションでパンプは最大になった。
叫びながら、叫びながら、心を落ち着かせていた。

心・技・体

僕にとってクライミングに必要なのは、
絶対に登りたい!っていう熱い熱い気持ちだ!
その情熱が全てを導いてゆく。
(弱い体も、つたない技術すらも・・・)

そして弱い心をぶち破り、Tutti Fruttiを登り切った。

みんなありがとう。

さっ、今からまた新しい課題にトライや!

昨日の深夜から書き始め、寝て、今朝クライミング出発前に書ききったので今日もエンジョイクライミング!


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